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フォームローラーを完全ガイド フォームローラーとは? 筋肉がほぐれるメカニズムを解説

トレーニングするのは好きだが、終わったあとの筋肉痛や筋肉のこわばりにいつも悩まされている人もいるはずだ。あるいは、日頃から肩や腰に、張りや痛みを抱えたままデスクワークを続けているという人も多いだろう。そんな人たちにぜひ試していただきたいのがフォームローラーだ。今回は、筋肉の緊張による張りや痛みなどの解決に役立つフォームローラーのメリットとデメリットについて解説していきたい。
from Iron Man Magazine Website

<本記事の内容>
フォームローラーとは
フォームローラーの目的
筋肉がほぐれるメカニズム
フォームローリングのメリット
①筋肉痛の緩和に役立つ
②柔軟性の向上と可動域の改善に役立つ
③血流量の増加に役立つ
④ケガの予防に役立つ
⑤姿勢の改善に役立つ
⑥ストレス緩和に役立つ
フォームローリングのデメリット
フォームローラーの種類

フォームローラーとは

「筋膜リリース」という言葉を聞いたことがあるだろうか。筋膜リリースには、筋線維を包む筋膜の緊張を緩めて筋肥大のスペースを作ったり、筋肉の緊張を解きほぐしたりする効果があり、専門の施術師によって行われるものだ。フォームローラーは、そんな筋膜リリースをセルフで実践するためのツールだ。筋肉の緊張や凝りをほぐすことで柔軟性が向上し、動作の可動域が広がり、結果的に運動能力の向上が期待できるとされている。

フォームローラーの目的

フォームローラーを正しく用いれば、筋膜の緊張を和らげたり、筋肉痛や炎症を緩和したりする効果が得られる。その結果として筋肉の可動域が広がり、筋膜が緩んで筋肥大のスペースが得やすくなるため、特に筋発達を目指すボディビルダーなら活用して損はないだろう。

フォームローラーは道具の名前で、フォームローラーを用いたマッサージをフォームローリングと呼ぶ。フォームローラーには形状やサイズ、素材によって様々な種類がある。最も一般的なのは円筒型で、直径12.5~25.5cm、高さ30~120cmとサイズの幅も広い。素材は高密度のスポンジが用いられている場合が多く、使用者のフィットネスレベルや筋肉の凝り具合などによってはフォームローリング中に痛みや違和感がある。

筋肉がほぐれるメカニズム

フォームローリングを行うには、フォームローラーを床に置き、対象部位をその上に乗せて自重をかけながらローラーを転がす。ローラーを転がすことで対象部位に圧がかかると、その部位にある受容体が脊髄を通して神経系に信号を送る。信号を受け取った神経系は、対象部位の周辺の筋肉に対して緊張を緩めるように指令を送る。指令を受けた筋肉は緊張を緩め、凝りが解消されというメカニズムだ。

また、フォームローリングには血流量を増加させる作用もある。血流が増えれば栄養と酸素の運搬が活発に行われるため、疲労した筋肉に栄養を含んだ血液を行きわたらせることで疲労回復も期待できる。

ワークアウト前のウォームアップとワークアウト後のクールダウンにフォームローリングを行うことで、ワークアウトの効率が上がり、疲労回復にもつながるのだ。

フォームローリングのメリット

①筋肉痛の緩和に役立つ

ワークアウト後の筋肉はだるさ、痛み、張り、凝りなどを感じやすい状態になっている。大半のトレーニーはそのような不快感を我慢して過ごしているようだが、場合によって、そのような状態を放置したことで次回のワークアウトにマイナスの影響を与えてしまうことも考えられる。

そこでワークアウト後にフォームローリングを行うことで、そのような不快感の緩和が期待できる。対象部位とその周辺をローリングすることで、ワークアウトで刺激を受けた筋肉の緊張をほぐし、血流が活発になることで疲労物質や炎症物質などが速やかに除去されるようになる。そのため、疲労回復を早めることにもつながる。

ワークアウト後の不快感や疲労感がより早く解消されれば、次回のワークアウトでも十分に強度を高めることができるはずだ。

研究によると、高強度のワークアウト後にフォームローリングを施すと、遅延性筋肉痛の緩和が見られ、より短時間で筋肉の機能が戻るという実験結果が得られたそうだ。

大切なのは、ワークアウト後はできるだけ早く炎症を鎮め、筋肉をリラックスした状態に保つこと。そのような身体の環境を作ることがワークアウト効果を最大限に引き出し、それが筋発達にもつながっていくのだ。フォームローリングがそのために役立つのだとすれば、このテクニックを使わない理由はないはずだ。

②柔軟性の向上と可動域の改善に役立つ

高重量を扱うことは筋肥大のためのひとつの条件でもある。しかし、何もケアをせずに高重量でのワークアウトを繰り返していると、筋肉が凝り固まった状態で萎縮してしまうこともある。筋肉の凝りや萎縮を放っておくと、可動域を制限してしまうことにもなりかねない。

筋肉の柔軟性が低下して可動域が制限されてしまうと、筋肉をしっかり動かすことができなくなり、それはやがて筋発達の足かせになってしまう。そのような筋肉の凝りや萎縮をできるだけ回避するためには、ワークアウトのたびに十分なケアをする必要がある。フォームローリングもそのためのひとつの方法だ。

ワークアウト後のクールダウンだけでなく、ワークアウト前のウォームアップとしてもフォームローリングは有効だ。ワークアウト前の筋肉をフォームローラーでほぐすと、神経系が刺激されて対象部位やその周辺が温まる。その結果、リラックス状態がもたらされ、刺激が浸透しやすくなったり、血液が流れ込みやすくなったりすることでワークアウトの効果が上がると考えられる。

フォームローラーで対象部位に圧をかけ、ストレッチしたまま静止するテクニックは、筋肉の萎縮を防ぎ、柔軟性の向上や可動域の改善に効果的であることが多くの実験で示されている。

③血流量の増加に役立つ

フォームローリングには血流を促す効果があり、これはとても画期的なことだ。というのも、通常は筋膜、腱、靱帯といった組織に流れ込む血流量はそれほど多くないからだ。フォームローリングによって全身を巡る血流量が増加すれば、筋線維だけでなく筋膜や腱、靱帯にも栄養と酸素が運び込まれ、全身の隅々にまで栄養物質を行き渡らせることができると考えられる。

また、加齢に伴って血管の動脈は固くなってしまうわけだが、これを放置すれば血流量が制限されてしまう場合もある。そこで、フォームローラーを使ったマッサージを習慣づけることで動脈の柔軟性を維持したり高めたりできると考えられているので、やはり血流量の増加や栄養物質の運搬を促すことが可能になる。

対象部位やその筋膜に圧をかけることは、固く萎縮してしまっている凝りをほぐすのに役立つ。緊張や凝りがほぐれれば血管の締め付けも緩み、これもまた血流量を増やすことにつながるのだ。

④ケガの予防に役立つ

ウォームアップを省いていきなり本番セットを開始すれば、ケガのリスクは格段に高まる。温まっていない筋肉は血流量がまだ少ない状態なので、いきなり強い負荷を与えればただでは済まないということは容易に想像がつくはずだ。最悪の場合は筋断裂という事態にもなりかねない。

そのようなケガの予防のためにも、ウォームアップに加えてフォームローリングも行っておくとさらに効果的だ。ローラー表面の突起部が対象部位を不規則に圧迫し、それが対象部位に熱を発生させるのでいいウォームアップになるのだ。

⑤姿勢の改善に役立つ

姿勢の悪さは筋力のアンバランスを生むので腰痛や凝りなどの原因になり、運動能力の低下などを引き起こす可能性もある。フォームローリングは、より良いアライメントとリラックスを促す効果があるので、姿勢を良くするためのツールになり得る。

⑥ストレス緩和に役立つ

フォームローリングはメンタルヘルスにもプラスになる。日頃からストレスを抱えている人などは、筋肉や筋膜の緊張が長期間にわたって続いているので、凝りや痛みに悩まされていることが多い。そのことが原因で日常の行動も制限されたりすると、それがまたストレスの原因になる。

フォームローリングで日ごろから筋肉の緊張を緩めておくことで、身体だけでなく精神的な緊張も取りのぞけるので、ストレス緩和にも役立つはずだ。フォームローラーはアスリートだけではなく一般の人たちにも推奨できるマッサージ法なのだ。

フォームローリングのデメリット

①ケガを悪化させるリスク

すでにケガをしていたり炎症が起きていたりしている部位にフォームローリングを行うと、症状を悪化させるリスクがある。例えば、すでに筋断裂が起きている部位にフォームローリングを行うと、断裂範囲を広げてしまったり、炎症を悪化させたりする可能性がある。そのため、すでに強い痛みがある部位や明らかにケガをしている部位、傷がある部位などには行わないこと。痛みがある部位にフォームローラーを使うかどうか迷っているなら、自己判断せずに医師や専門家に相談するのが賢明だ。

②部位によってはダメージを増幅させるリスク

フォームローリングの強度や頻度には注意が必要だ。例えば膝、足首、肘などの小さい関節に対しては、強度が高いとダメージやだるさをもたらすことがある。また、首や下背部に用いるときも十分な注意が必要だ。

フォームローリングを行う場合は、どの部位であってもまずは弱い強度からスタートし、いきなり過度な圧をかけないように注意しよう。また、皮膚が薄い部分、肘や足首など小さい骨が集まっている関節部などを直接ローラーに乗せて転がすことはできるだけ避けたほうがいいだろう。

③神経を痛めるリスク

フォームローラーは神経や血管、リンパ管、皮膚の受容体などの組織に負荷やストレスを与えるため、場合によっては神経を痛める原因になる。静脈瘤、重度の骨粗鬆症、糖尿病、リンパ浮腫などの疾患がある人は、フォームローラーの使用は控えたほうがいいだろう。

また、大腿部の外側や手首など、皮膚が薄い部位にフォームローリングを行うと、神経を圧迫してしまう可能性もある。浅層部に神経が通っている部位へのフォームローリングは避けるようにしよう。

④早産のリスク

妊娠中の緊張を和らげるためにフォームローラーを利用する人もいるようだ。しかし、妊娠中期にフォームローリングを行うと、場合によっては早産になる可能性があることを知っておいてほしい。特に妊娠後期は、あお向けに寝た状態でのフォームローリングやふくらはぎのマッサージは避けるようにしてほしい。妊娠中にフォームローリングを行う場合は必ず医師に相談すること。

フォームローラーの種類

フォームローラーの種類は様々で、どれを選ぶかは個人の好みだ。特別な指標があるわけではないので、自分に適したものを探し当てるには試行錯誤が必要になるかもしれない。

それでも、ローラーのサイズと形状を最初に考慮すると選びやすいだろう。例えば、カーフや腕などの小さな部位に用いることをメインに考えているなら、直径の小さいローラーが適している。小さめのローラーは持ち運びにも便利なので、自宅だけでなくジムでも使いたい場合は重宝するはずだ。

以下に3種類の代表的なフォームローラーを紹介しておきたい。

●テクスチャードローラー

テクスチャードローラーは、ローラーの表面に凹凸があるタイプだ。そのため、筋肉の深部にまで刺激を行き渡らせるのに役立つとされているので、ワークアウト後に対象部位の凝りや緊張をしっかりほぐしたい場合に適している。

●スムースローラー

スムースローラーは、表面に凹凸がなく密度が高いのが特徴だ。表面がフラットなので、対象部位に対して均一に圧を与えることができる。価格も手頃なので、これからフォームローリングを始めようという人に適している。

●バイブレーティング・フォームローラー

フォームローラーの中では最新のタイプである。振動をもたらすマッサージガンと、圧を加えるフォームローラーが組み合わさったものと考えていいだろう。フォームローラーの本来の機能に加えて、振動を与えることでさらなるリラックス状態を作ることが期待できる。

まとめ

フォームローラーは正しく使うことで、身体や精神をリラックスさせるのに役立つ。アスリートにとっては、ワークアウトによって疲労した筋肉の回復を促し、柔軟性を高め、可動域を広げ、総合的に競技能力の向上を図ることができる。運動とは無縁の人でも、フォームローリングによって筋肉の緊張をほぐすことを習慣にすれば、日常生活での動作が楽に行えるようになるはずだ。

ケガの予防策としてもフォームローリングの効果は見逃せない。本格的に競技に打ち込むアスリートであればケガは選手生命に関わる問題なので、1つでも多くのケガ防止策を学んで実践したいはずだ。

まだフォームローラーを使ったことがない人は、この機会にぜひマッサージ効果を体験してほしい。自宅にフォームローラーがあれば空いた時間に筋肉をほぐすことができるし、ジムに持ち込んでワークアウト前後に行えば、効果的なウォームアップやクールダウンが行える。

フォームローリングはアスリートにも一般の人にも役立つマッサージ法であり、競技能力や生活の質を高めてくれるツールなのである。

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