トレーニング mens

究極のビッグ3完全解説 スクワットは初動が大切 伝説のパワーリフターが解説

ウエイトトレーニング専門雑誌『IRONMAN』の人気連載『三土手大介 究極のBIG3徹底解説』から特別にお届けします。今回はスクワットの動作のポイントを解説していきます。よく言われる「つま先よりも膝を前に出さないように」は本当に正しいのでしょうか。では、見ていきましょう。自分にとっての「正解」を見つけ出すためのヒントになるはずです。

<本記事の内容>
スクワットについて教科書の解説は本当か
「踏み圧」とは一体何か
股関節から動くか?膝から動くか?
結局、どちらの初動が正しいのか
「前傾」の是非について

■教科書の解説は本当か

一般的なウエイトトレーニングの教科書に載っているスクワットフォームの解説には、次のように書かれていることが多いです。

「スクワットはなるべく膝を安定させた中で、つま先よりも膝を前に出さないように意識して、股関節(腰やお尻という表現の場合もある)を後ろに引いていきましょう」。

また、膝に関してはつま先よりも前に出さないだけではなく、内側に入ってこないように注意する、つまり「ニーイン」しないようにすることも書かれています(ただ、ニーインに関しては、基本的に極端でない限り多くの人は気にしなくてもよいです)。

このように解説されていると、基本的なスクワットのフォームはこの意識で行えばいいのだろうと多くの人は思うかもしれませんが、実は違います。

例えば、パワーリフティングのトップリフターでも、よく見てみると股関節から動かしている人もいれば、膝から動かしている人もいます。

これを見ると、どちらが正解なのかと、悩んでしまう人も多いと思います。

というのも、「膝をなるべく安定させた中で股関節から引きましょう」という解説を厳密に守り、実行してしまっている人が多いからです。

そうした現状がある中で、動作のポイントとして「どちらの関節から動かすか?」ということは後述しますのでここでは置いておいて、まずは「何を意識してしゃがむか?」というところから解説していきたいと思います。

■「踏み圧」とは一体何か

しゃがみはじめのポイントは足裏の「踏み圧」です。

動作の最中にしっかりと地面を捉えている感覚が重要なのです。

地面を捉えている感覚がある中で、グラグラせずにどうやったら安定してしゃがめるか?ということを自分の中で観察してみてください。

足裏が安定した状態でしゃがめるときの股関節や膝の動きが、自分にとっての正解だと思ってよいです。

ところで、この「踏み圧」という言葉。

昨今、非常に認知されてきていますが、その昔はそんなに「踏み圧」という言葉は聞かれなかったと思います。

この踏み圧とは一体何なのかというと、「地面を踏み続けて圧力を一定に保つ感覚」とか、「ぴたっと、ずっと地面に安定して着いている感覚」とか、そのような感覚のことを言います。

脳科学の世界でも「踏み圧」というものが定義されていて、正確な言葉としては「圧覚(あっかく)」と言います。

しかし、スクワットでは「踏み圧」という言葉が分かりやすいと思います。

もっと分かりやすい日常的な言葉で言うと、「地に足が着いている状態」などが一番近いと思います。

いずれにせよ、足裏がグラグラせずにどうやったら自分がバランスよくしかもスムーズに深くしゃがめるか、ということが大切になってきます。

このあたりのことは自分に最適なスタンスを探す際にも役立ちます。

何も担いでいない状態で足裏が地面をしっかりと捉えてグラグラせずに、いかに楽に深くしゃがめるか。

そのスタンスが、今の自分にとって一番理想的なスタンスになります。

スクワットは当然、重たいものを持ってしゃがむという動作なので、グラついてはダメですし、何も担いでいない状態で深くしゃがめないスタンスなのに、そこに重さが加わればちょっとした関節技になってしまいます。

そのようなスタンスでは決して良いスクワットはできません。

■股関節から動くか?膝から動くか?

少しスタンスの話にそれましたが、この足裏がグラグラしないように安定してしゃがむためには、とにかく正しい初動が大事なのです。

「初動」、いわゆる動きの初めのことを言いますが、人によって股関節から初動する人もいれば、膝から初動する人もいます。

他の人のスクワットをよく観察してみると、瞬間的にどちらかの関節のロックが外れて動き始めているはずです。

しかし、もともとどちらのロックも最初から外れていて筋肉だけで重さを受け止めている人もいます。

そのような人のスクワットは、どちらの関節からロックが外れているのかがよくわからない状況になっています。

本来ならば、早めに修正すべきです。

動く前に、骨格で重さを正しく受け止めるフォームに修正すると、今後のさらなる伸びが期待できます。

また、本当に自分が粘ったときや、本当に追い込まれたときに自然と現れる動作がこのどちらかに分類されると思います。

もちろん、それは極端に「股関節から」とか「膝から」とかという感じになるわけではなく、ほんの少しの差で初動の違いが出てきます。

例えば、股関節から初動する人は、股関節が積極的可動部位になるため、膝が安定部位になってきます。

このように、必ずどちらかの関節が安定部位で、どちらかの関節が積極的可動部位になります。

どちらも安定してしまっては動きにくくなりますし、どちらも積極的可動部位だとグラグラしてしまい動きにキレがなくなります。

ですから、いわゆる一般的な教科書的なフォームとしてよく言われることで「膝をなるべく安定させて」とか、場合によっては「固定させて股関節から動かす」などの表現は全ての人には当てはまらないのです。

ちなみに私は「固定」という言葉はあまり好きではありません。

「安定」という言葉のほうが適切かと思っております。

■結局、どちらの初動が正しいのか

股関節から初動する人は膝の安定がある中で、股関節が積極的可動部位になるので、股関節から動くように見えます。

膝から初動する人は股関節の安定がある中で、膝が積極的可動部位になるので膝から動くように見えるのです。

どちらにせよ安定部位と可動部位がちゃんとバランスよくあるということが大切なのです。

したがって、どちらが良いとか悪いとかは全くなく、どちらも正解なのです。

ただし、自分に合っていないほうで動くと妙にグラグラしてしまうことなります。

冒頭にも少し触れたように、一つの目安として足裏がちゃんと踏めている感覚、安定している感覚があることが大切です。

そこが上手くいっていれば自分にとっての初動がうまく出ていると思ってよいです。

逆に考えれば、初動がうまく出せれば足裏も安定しているということにつながってきます。

この「どちらから動かすか」というところは、もちろん人によって変わってきますのでどちらが正解というのは全くありません。

自分がやりやすいほうでやっていただければよいです。

ただし、本来は膝から初動したほうが自分にとっての正解の人が、「教科書的なフォームは股関節から動かす」からといってその初動にこだわってしまうと、なかなか自分の中のイメージと実際の動きが噛み合わないという不具合が生じてしまいます。

そこは気を付ける点だと言えます。

また、逆に本来股関節から動かす人でも構えた状態が不十分で、横から見たときの身体の状態が「く」の字のように曲がっていると、すでにその段階で股関節や腰が後ろに出てしまっています。

その後の動きは見た目「膝から曲がっている」ように見えますが、実際はすでに股関節が先に出てしまっているので、残りの動かせる関節は膝からいくしかないという状態になっている場合があります。

ですので、重たい重量で正しくスクワットをするためにも、筋肉だけではなくて、しっかりと骨格で担いだところからどういう初動が出てくるかというところが非常に大事になってきます。

ここまで解説したことを追求していくと、おのずと自分にとってのよいスクワットの動きというのが出てくると思います。

■難しく考えるべからず

ところで、ここまでの一連の解説の中で、例えば「しゃがみ方」や「切り返し方」、「立ち上がり方」などを分割して説明してないことに気が付きましたか?

要は、初動が正しく出れば、その後の動作というのは「素直にしゃがんで立ち上がってくる」ということになるので、そんなに難しくはないのです。

それを小難しく分割して考えてしまうから、いろいろとおかしくなってしまうのです。

あくまでも初動が出て滑らかな動きが出せたら、そのまましゃがんで立って戻ってくるという一連の動きが大切で、特にしゃがんでいくときの行きのルートと、立ち上がってくるときの帰りのルートが同じになることが非常に大切です。

初動が出たら、動作は最後までワンストロークの意識が大切です。

途中で動きをぶつ切りにしたり、二段階にしたりしないことです。

動きがずっとつながっているということも、正しいスクワット動作をするためにはすごく大事なのです。

■「前傾」の是非について

最後に「前傾」について解説します。

正しく初動が出せたら、その後は当然バランス良く前傾していかなければなりません。

一般的には前傾すると腰に悪いというイメージがあるので、前傾は極力しないようにする意識をすすめられることが多いですが、そんなことはありません。

バランス良くしゃがんでいくためには、必ず前傾は必要になってきます。

前傾は決して悪ではないのです。

前傾角度も、人によって浅く見える人もいれば深く見える人もいます。

どんな人でも自分にとって正しい前傾角度を取らないと良いスクワットはできないのです。

多くの場合は自分の中で少し前傾角度が強いかな?と思うくらいがちょうどいいと思ってください。

ここまで解説したことを意識してスクワットをすれば、自然と自分にとっての良いフォームが身についてきます。

ぜひ参考にしてみてください。

究極のビッグ3完全解説

概要
ビッグ3のスクワット、ベンチプレス、デッドリフト完全解説講座。
最新の情報がこの講座にはすべて詰まっています!

あと5㎏、いや10㎏伸ばしたい!!そんな皆様。三土手大介におまかせください。
この講座で解説する内容を実践すれば皆様のビッグ3レベルは飛躍的に上がります。

この講座では理想的なビッグ3のフォームを最短で会得するためのあらゆるヒントやテクニックが詰まっています。今現在三土手大介が持っている知識をすべて詰め込みました!!

究極のビッグ3完全解説は強くなりたい皆様を応援します。

価格:37,250円(税込)

みどて·だいすけ
1972年8月26日生まれ 神奈川県横浜市出身。NoLimits 代表·レッシュマスター級トレーナー。一般社団法人レッシュ·プロジェクト理事。スクワットで日本人初の400㎏オーバー、ベンチプレス日本人初の300㎏オーバー、トータル日本人初の1t オーバーなどパワーリフティングで数々の記録を樹立。世界パワーリフティング·世界ベンチプレス·ワールドゲームズ·アーノルドスポーツフェスティバルPRO BENCH と4つの世界タイトル獲得。ベスト記録はスクワット435㎏、ベンチプレス360㎏、デッドリフト320㎏、トータル1060㎏。

構成:藤本かずまさ 写真提供:三土手大介 サムネイル写真:Shutterstock


-トレーニング, mens
-,