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「絞りの女王」解体新書 女子フィジークトップ選手の夫はボディビルダー

原田理香選手2018年に彗星の如く現れた原田理香選手。初出場の西日本大会で優勝、そして同年の日本選手権で11位という成績を収め、女子フィジーク界でも一躍話題の人物となった。トップ選手として輝く彼女の鍛え上げられた肉体は、どのようにして作られたのだろう。選手本人と夫の原田大智さん、東将治さんに話を伺い、その秘密を紐解いていく。

【写真】原田理香選手のバリバリの背中

光る原石は広島のジムにいた

左から東将治さん、原田理香選手、原田大智さん

左から東将治さん、原田理香選手、原田大智さん

――トレーニング歴自体は15年以上と伺っていますが、当初からウエイトトレーニングを?

理香 いえ、全然(笑)。32歳でジムに入会したんですけど、3年くらいはずっとトレッドミルで有酸素運動をメインにしていました。筋トレを始めたきっかけは、当時のジムで仲良くなったボディビルダーたちに勧められたからなんです。お尻がプリッと上がったボディラインに憧れていたので、みんなに相談したら「身体を変えたいんだったら、トレーニングした方がいいよ」って。スクワットとか基礎的な種目からトレーニングを教えてもらって、素直にやり始めました。その後、一緒にトレーニングしていたジム仲間がジムを開業することになり、その店舗へ移ったんです。そこで夫(原田大智さん)と出会いました。

――その時大智さんが持っていた、理香さんに対する印象は?

大智理香さんのことを知ったのは2016年ごろだったと思います。80㎏でフルスクワット10レップ3セットを余裕そうにしている理香さんの動画をインスタグラムで見て、単純に強いな、と。会ってみたかったんですが、行く時間が被っていなかったので、理香さん狙いで土日の昼間にジムへ行くようになりました。

――会ってみるとどうでしたか?

大智いい線いってるけど肩がないな……と(笑)。その時の理香さんは、「腕が出る服を着たときに、ムキムキだとおかしいから」という理由で、申し訳程度にショルダープレスをするくらいだったようで。一方で胸・背中・脚はしっかり筋肉あったんですよ。扱っている重量も強くていい身体でした。一緒に合トレをするようになって、最初に感じたのは理香さんのフォームがもったいない!ということ。扱う重量はすごいのに、負荷が抜けてしまっている部分があったんです。なので、僕がフォームのアドバイスをするようになりました。その時から大会に出ようよ、とずっと言ってましたが、理香さんは興味なかったようです。なので、大会のことは一旦抜きにして、腕と肩もトレーニングした方がバランスのいい身体になれるよ、と理香さんを少しずつ騙していきました(笑)。

理香 私素直なので、大ちゃん(大智さん)に腕や肩のトレーニングを聞くようになりました。さらに、食事の摂り方やサプリのことなど細かな部分もアドバイスをもらうようになり、トレーニング内容も少しずつ変わって、筋肉が育ってメリハリのある身体になり始めたんですよね。そこから大会も意識するようになったかな。その肉体の秘密は筋肉への意識

――まさに理香さんは原石だったんですね。大智さんが理香さんのパーソナルトレーナーのような立ち位置だったんですか?

理香 いえ、大ちゃんはあくまで合トレ仲間。教わるというより、フォームを見てもらって改善点を聞いて、自分でトレーニングする流れでした。存在が近すぎると、それぞれの意見がぶつかっちゃって(笑)。胸&肩のサイド・背中&肩のリア・ハムストリング・肩&僧帽・腕・四頭に分けて週に6日、トレーニングを行っていました。

大智 このジムを立ち上げた2017年当時は、まだ広島市内に24時間ジムがありませんでした。あるものでトレーニングをするしかなく、このときに理香さんは、フリーウエイトでブルガリアンスクワットを60㎏でやるっていう技術を身につけました。

――どんな環境でもトレーニングを止めなかったんですね。そして大会初出場の2018年に衝撃の成績を収めました。近くで見てきたからこそ分かる、“理香さんの凄さ”はありますか?

東 高重量かつ高強度でハードにトレーニングをしているところです。特に、ハムケツの強さは相当ですよね。理香さんのトレーニングを見ていて個人的に感じるのは、ハムストリングやお尻で身体を支えることがすごく得意なんじゃないじゃないかと。ヒンジの動作をしたときに、腰や背中が曲がらず体幹が安定している。このインナーマッスルの強さは、どの部位のトレーニングにも生きてきます。例えば、ブルガリアンスクワットを70㎏でセット組んでも、しっかりと殿筋の収縮で立ち上がることができますし、スクワットを100㎏でセット組んでも四頭筋や殿筋などの脚周りの筋肉群でしっかり上げられるんだと思います。

大智 加えると、理香さんのトレーニングはどの部位もチーティングを使って重量を追い求めるようなことをしないんです。ほとんどの種目において、10レップ程度でしっかり扱える重さでトレーニングをしているだけで。その重さが単純に重いんです(笑)。

理香 周りの人から「こんなに重たいの扱っててすごい!」ってよく言われたんですけど、本人は全く自覚なしです。周りに比べる人がいなかったので、そうなの?って思ってました。

――女子の選手でもかなりの重量を扱っていると思います。トレーニング中、リストラップなどのギアを巻いていませんでしたが、普段から使わないんですか?

理香 パワーグリップとかベルトはしますが、それ以外はほとんどしませんね。特にベルトは、少し緩めた状態でつけて、自分の腹圧をしっかりかけてトレーニングしてます。締め付けられる感覚が好きじゃなくて。

東 身も蓋もないですが、理香さんはトレーニングの天才なんだと思います(笑)。

――理香さんは、どんな意識でトレーニングを?

理香 トレーニングを始めた当初から変わらないのは、筋肉に負荷を乗せることを意識している点です。単関節種目は追い込むようなこともたまにするけど、基本的にはフォーム度外視で重量をあげるようなことはしません。やっぱりケガは怖いし、いつまでもトレーニングしたいですから。

選手としての第2ステージへ

――『レモンジム』でパーソナルトレーナーとしても人気ですが、どのようにトレーニングを?

理香 多い日は1日9〜10本のパーソナルセッションが入っています。自分のトレーニングは全部のセッションが終わった後にすることが多いですね。実は、昨年の12月ごろから本野卓士さんにパーソナルをお願いしていて、以前のトレーニングメニューからガラッと変わりました。

――本野さんといえば、“筋肥大職人”として、数々の選手育成をされているトレーナーです。新しい刺激だとは思いますが、体感としていかがですか?

理香 今までしっかり教わったことがなかったので、とにかく新鮮です。週6日のトレーニングは変わっていないんですが、脚の日が週に1回に減り、逆に背中の日が週に2回に増加。また、私はほとんどの種目をサムレスグリップ(親指を使わない握り方)で行うようになりました。この方が私には合っているみたいで、しっかり効かせたい筋肉に負荷が乗っている感覚があります。また、減量中の食事も変化しました。去年までは朝のプロテインスムージーから始まり、3時間おきに食事。炭水化物は和菓子メインで、タンパク質は鶏胸肉から摂取という、かなり邪道な減量方法です(笑)。今年は、本野さんの教えで米やフルーツも食べるようにしています。

――もう一段階、ステージが上がるような予感がしますね。

理香 肩の大きさやポージングなど、課題もあります。しかし、女子フィジークのカテゴリーで見ると、私はまだ中堅レベル。自己流だけでなく、改めてきちんと教わることで、発達しそうだと確信しています。まだまだ進化するでしょうね。今年は8月のジャパンオープンが初戦の予定です。減量も本格的にしなくてはいけないんですけど、大丈夫かな。

大智&東 理香さんの減量は誰も心配してません!(笑)。

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取材・文:小笠拡子 撮影:西山稔夏 取材協力:レモンジム

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